氏とパワー・バランス

 日経新聞の夕刊で見つけた記事。面白いというか、ああやっぱりというか。

 記事は、タイ北部の山間部の村における末子相続の慣習を紹介したもの。チェンマイからほど近いポンイエンナイン村というところでは、末子相続の慣習が残っていて、娘に面倒を見てもらいたいと思う親が多いため、末っ子には娘が多いのだそうだ。娘が生まれたら「打ち止め」(笑)ということ。

 ただ、こうした慣習も「時代の波にさらされている」らしい。

以前は夫婦別姓が当たり前だった山間部だが、別姓を認めない法律が浸透するにつれ、妻も夫の名字を名乗るようになった。「妻の社会的地位が低下し、娘への相続も少なくなってきた」(チェンマイ大学のウドム・ルンルアンシー教授)(日経新聞12月9日夕刊3頁)

 同姓を強いる法律が夫婦やそれを含む家族の間にどのようなパワー・バランスを強いる(強いている)のか、決して対等でない当事者の間へ一見「価値中立的」な制度を持ち込むことがどのような効果を持つのか、反対論者はじゅうぶんに心にとめてほしいと思う。いや、もちろん「彼ら」はそんなことは重々承知の上で、だからこそ「家族の一体感を損なう」などという、わけのわからない理屈を持ち込んで選択的別姓の導入に強硬に反対しているのだろうけれど。